映画・LION ライオンを見ました
映画・LION を見ました。
サルー・ブライアリーのノンフィクション本
”25年目のただいま−5歳で迷子になった僕と家族の物語”を映画化したものです。
オーストラリアで何ひとつ不自由なく暮らす青年サルー。
でも彼は、インドの貧しい家に生まれ、5歳のとき、迷子になり、過酷な路上生活や虐待、性的暴行はびこる施設で生活を送ることに。
その後、家族とは会えないまま、オーストラリア、タスマニアに住む、ブライアリー夫妻の養子として引き取られ、愛情あふれる家庭で幸せに暮らしていました。
あることがきっかけで幼少時代の記憶が蘇り、自分が幸せであればあるほど、
貧しかったけれど、インドで今も自分を探し続けているであろう優しかったお母さん、お兄さんへの想いがあふれ、今の生活ができなくなっていきました。
でも、覚えているのは、
うろ覚えの生まれた村の名前だけ。
愛する養母(ニコール・キッドマン)への罪悪感を感じ次第に距離を置いてしまうサルー。
しかし毎日グーグルマップで必死で探し、
そしてついに。
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先入観なく軽い気持ちで見たのですが、
大変面白く深い映画でした。
インドの驚きの社会背景、養子としてもらわれたサルーのアイディンティティー、オーストラリアの養父母の信念、人生観がていねいに描かれています。
しかも原作にあるように、本当に起こったこととは信じられません。
平和な日本に住む私からしたら、
サルーが迷っているとき、
「警察に行けばわかりそうなものなのに」 とか、
「誰か大人がすぐ助けてくれてもいいものを」
と映画を見ながら頭をかすめるけれど、
見ていくうちにだんだんインドの事情がわかってきます。ものすごい数の路上生活の子供たちなんです。(子供だけではないですが)
インドでは、年間8万人の子供が行方不明になるそうです。
8万人!
きっと、路上に寝ている子供は、ある意味、「日常の風景」になっているのでしょうか?
考えさせられたのは、2人目の養子に来た子が、問題を抱え、馴染めなかったことです。
この映画が、そこまで描いているのがすごいと思います。
そうでなかったら単純に、
「インドの貧しい孤児が、アングロサクソンの夫婦にもらわれ幸せに」
という構図が強調されたかもしれません。
そのとき、サルーがいいます。
「お母さん、
僕たちみたいな過去のある養子なんてもらわないで、最初から白紙の子供を育てればよかったのに」
愛情だけでは解決しない問題に苦悩しながらも、自分たちの人生を意義のあるものに捧げようとするミス・ブライアリーを演じるニコール・キッドマンの演技もすばらしいです。
あの問題のある子供に人間の業のようなものを感じました。ある時期、大切なものを徹底的に壊された人間は、それを取り戻すには、長い長い時間がかかるのかもしれません。
あるいは不可能なことも。
グーグル・アースという現在のテクノロジーで可能になった幸運の再開だったけれど、
同時に、そんなハイテクな現在も、世界中で人身売買や、虐待、過酷な状況の子供たちが
たくさんいることを覚えていなくては!という映画でした。
でも何よりも、
子役の走りっぷりがかわいい映画でもあります!
いい映画でした。